2013年御翼2月号その2

あなたの音楽のルーツは何ですか―「異邦人」で一世を風靡した久米小百合さん

 1960年代前半、大ヒット曲「異邦人」で有名になったのが、現在、クリスチャンの音楽伝道師・久米小百合さんである。東京・国立で生まれ育った久米さんは、小三のとき、学校で同級生が教えてくれた讃美歌「主我を愛す」に関心を持ち、教会学校に通い始める。しかし、中学生の頃から行かなくなるが、それが福音の種まきだったのだ。
 短大を卒業する頃、レコード会社CBSソニーが、一般の人を対象にオーディションを募り、当時、作っていた自作の曲のテープを送ったところ、審査員の目にとまり、歌謡界にデビューした。シンガーソングライターとして脚光を浴びると、毎日のように取材攻めに会い、「あなたの音楽のルーツは何ですか。生きる目的は何ですか」などと聞かれるようになる。それに答えられないことが歯がゆくて、考えたところ、浮かんできた発想が、「自分が好きなものは何であったかを考えれば、自分の音楽を支えているものがなんであるか分かるかもしれない」というものだった。そして、思い出したのが、小学生の頃、同級生が歌ってくれた「主我を愛す」だった。やっぱり自分は讃美歌が好きなんだ、だから教会に行ってみれば、人生の指針が与えられるかもしれない、と思い、十一年ぶりに再び教会を訪れた。そこではみな喜んで讃美歌を歌っていた。何も利己的なものがなくただ神を賛美している彼らの方がプロじゃないか、本当の音楽を知っているんじゃないかと思った。ある伝道集会で、牧師がこう言った。「人生は、自分を神とあがめて生きる『自分教』となるか、真の神を仰いで生きるかのどちらかです」と。それを聞いて、自分は自己中心的な「自分教」だったことを認め、本当の神を信じてみたいと決心する。受洗後、牧師のはからいで、クリスチャン音楽家の友人が与えられ、その中の一人が現在の夫・久米大作氏であった。婚約時代、大作さんは、「ヒット曲を出さなければ、などというプレッシャーから解放されて、神さまを賛美する曲を作って行こう」と助言してくれて、一九八四年、小百合さんは結婚と同時に芸能界を引退する。
 現在、息子さんも与えられ、家庭を守りながら、チャペルコンサートを行っている。彼女のビジョンは、息子、あるいは孫の時代には、日本には、讃美歌やゴスペルだけでなく、クリスチャンが作った、神を賛美する歌が一般の音楽界でもヒットするような時が来ることである。レコード大賞を取るアーティストが、自然と「自分がクリスチャンで神さまに感謝します」と言える時代が来ることである。その種まきができたらよいと考えている。そんな夢を語る久米小百合さんは、元芸能人ということからくるもどかしさ、空しさなど感じさせず、平安に満ちている。
 芸能界で頂点にいたとき、この世的には最高とされたとき、久米さんは霊的な問題を抱えていた。しかし、真剣に音楽と人生の意味を探究して行った時、キリストと出会い、「自分教」から解放された。そして、音楽はイエス様の救いを表わす手段であるという確固たる目的を手にすることができた。

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